銀行手続きはどこまで簡略化できる?相続の「限度額払い戻し」の違いを解説

2026年04月30日

「A銀行ではすぐ払戻しできたのに、B銀行では断られた…」
実はこれ、よくある話です。

相続が起きると銀行口座は凍結されますが、一定額までなら"簡易的に払い戻せる制度"があります。ただし、その取扱いは金融機関ごとに大きく違います。
今回は、司法書士の実務目線で「限度額払い戻し制度」の仕組みと注意点を分かりやすく解説します。

目次

1 限度額払い戻し制度とは
2 なぜ銀行ごとに違う?
3 よくある誤解
4 実務上の注意点
5 司法書士が入るメリット


1 限度額払い戻し制度とは

ご家族が亡くなると、銀行口座は原則として凍結されます。
これは「相続人間のトラブル防止」のためです。

しかし、凍結されるとすぐに困ることがあります。

   ・葬儀費用

   ・入院費や施設費

   ・家賃や公共料金

   ・当面の生活費

「お金があるのに引き出せない」という状態は、遺族にとって大きな負担です。

そこで2019年の相続法改正により、

👉 遺産分割前でも一定額を単独で払い戻せる制度(仮払い制度)

が創設されました。

法律上は
「相続開始時の預金額 × 1/3 × 法定相続分」
かつ
「1金融機関150万円まで」

と定められています。

これがいわゆる「限度額払い戻し制度」です。

2 なぜ銀行ごとに違う?

ここが実務の難しいところです。

法律上の上限は同じでも、
実際の運用は各銀行の"内規(内部ルール)"に委ねられています。

例えば、

   ・必要書類の種類

   ・印鑑証明の要否

   ・戸籍の範囲

   ・即日対応か後日か

   ・窓口のみか予約制か

これらは金融機関ごとにバラバラです。

私の実務でも、

A銀行:当日30分で払戻し可能
B銀行:書類追加提出で1週間
C信用金庫:相続人全員の同意書が必要

といったケースがありました。

つまり、

👉 同じ制度でも「使いやすさ」は全く違う

というのが現実なのです。

3 よくある誤解

ここで、よくある勘違いを整理しておきましょう。

「どの銀行でも150万円すぐ引き出せる」

 → 実際は書類不備で止まることが多い

「相続人1人が勝手に全部下ろせる」

 → 法定相続分の範囲内のみ

「窓口に行けばその場で対応してくれる」

 → 予約制・後日精査の銀行も多い

制度だけ知っていても、
現場運用を知らないと手続きが止まる
これが実務の落とし穴です。

4 実務上の注意点

私が特に注意しているポイントは次の5つです。

 ① 事前に銀行へ電話確認
 ② 必要書類を事前チェック
 ③ 相続人関係図を作成
 ④ 使途(葬儀費用等)の説明準備
 ⑤ 複数銀行は同時並行で動く

特に香川県のように地方では、

   ・地銀

   ・信用金庫

   ・JA

   ・ゆうちょ

   ・ネット銀行

と複数口座を持っている方が非常に多いです。

1行ずつ順番に動くと、数か月かかることも珍しくありません。

同時並行が鉄則です。

法定相続情報一覧図を戸籍の代わりに取得しておくと手続きが楽になります。

5 司法書士が入るメリット

「自分でできそう」と思われる方も多いですが、
実際にやってみると書類の多さに驚かれます。

   ・戸籍一式収集 ※戸籍収集だけのご依頼は受けられません。

   ・相続関係説明図

   ・法定相続情報一覧図

   ・各銀行の書式対応

   ・日程調整

これらを遺族が仕事や葬儀の合間に行うのは相当な負担です。

司法書士(不動産の相続登記前提で)が関与すると、

✅ 書類の一括準備
✅ 銀行ごとの違いを把握
✅ 不備ゼロで提出
✅ 手続き期間短縮

結果として「時間」と「精神的負担」が大きく減ります。

特に高松市周辺では、金融機関同士の連携や共通化も進んでいますので、地域事情を理解した専門家のサポートは大きな武器になります。

まとめ

相続時の限度額払い戻し制度は、
遺族を助けるとても良い制度です。

しかし同時に、

   ・銀行ごとの内規差

   ・書類の煩雑さ

   ・運用の違い

という"実務の壁"も存在します。

制度は知っているだけでは不十分。
「どう動けば早いか」を知ることが何より重要です。

迷ったときは、早めに専門家へ相談することが結果的に最短ルートになります。

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