第4回:「公正証書遺言」か「自筆証書遺言」か──あなたに合う遺言の形

2025年12月04日

遺言書を書く方法にはいくつかの種類があります。中でもよく使われるのが「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」。どちらが良いかは、人によって違います。今回は、両者の特徴と選び方を、司法書士の視点からわかりやすくお伝えします。「自分に合う遺言の形」を見つける参考にしてください。

目次

  1. 遺言の形式で"結果"が変わる?
  2. 自筆証書遺言の特徴とメリット・注意点
  3. 公正証書遺言の特徴とメリット・注意点
  4. どちらを選ぶ?──判断のポイント3つ
  5. 司法書士が関わるとどう違う?
  6. まとめ──「書いたあと」が大事になる

1. 遺言の形式で"結果"が変わる?

遺言書には、代表的なものとして

  • 自筆証書遺言(自分で書く)
  • 公正証書遺言(公証人が作成)
  • 秘密証書遺言(内容を秘密にして提出)
    の3種類があります。

このうち実際に多く利用されているのは、自筆証書遺言公正証書遺言の2つです。

「内容が同じなら形式は関係ない」と思われる方もいますが、
実際には形式の選び方で、実現できる確実性や安心感が大きく変わります。

つまり「どんな遺言にしたいか」ではなく、
「どんな人に向いているか」で考えるのが正解です。

2. 自筆証書遺言の特徴とメリット・注意点

自筆証書遺言とは、文字どおり自分の手で書く遺言書です。
紙とペンがあればすぐに作れるため、手軽に始められるのが魅力です。

メリット

  1. 費用がほとんどかからない
     自分で作成できるため、公証人の手数料は不要です。
  2. 内容を秘密にできる
     作成時点では誰にも見せる必要がないため、家族にも知られずに作れます。
  3. 気持ちを素直に書きやすい
     形式に縛られず、想いを自由に表現できます。

注意点

一方で、形式を一つ間違えると無効になるリスクがあります。
特に注意すべきは以下の点です。

  • 日付・署名・押印の欠落
  • 代筆やパソコン印字は原則NG(自筆が原則)
  • 財産の特定があいまい(「○○銀行の預金」だけでは足りないことも)
  • 発見されない・改ざんされる可能性
  • 相続開始後、「家庭裁判所の検認」が必要

これらのリスクを軽減するために、
**法務局の「自筆証書遺言書保管制度」**を利用する方法があります。
法務局で遺言書を預けておけば、紛失や改ざんの心配がなく、検認も不要になります。

3. 公正証書遺言の特徴とメリット・注意点

公正証書遺言とは、公証役場で公証人が内容を確認しながら作成する遺言書です。
作成時には、証人2人の立ち会いが必要になります。

メリット

  1. 法律上の確実性が高い
     専門家(公証人)が内容・形式を確認するため、無効になる心配がほぼありません。
  2. 原本が公証役場に保管される
     火災や紛失などのリスクがなく、相続開始後も確実に取り出せます。
  3. 検認が不要
     家庭裁判所の手続を経ずにすぐ執行でき、相続手続きがスムーズです。
  4. 代理作成も可能
     手が不自由な方や入院中の方でも作成ができます。

注意点

  • 公証人の手数料(財産額に応じて数万円〜)がかかる
  • 証人2人の立ち会いが必要(家族は原則不可)
  • 一度作成すると内容をすぐに変更しにくい

ただし、費用や手間がかかるぶん、**「確実に残せる遺言書」**としての信頼性は圧倒的です。
後日のトラブル防止を第一に考える方には、非常におすすめの方法です。

4. どちらを選ぶ?──判断のポイント3つ

では実際に、自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらが合っているのでしょうか。
判断の目安を3つ挙げます。

コストよりも「確実性」を重視したい方

公正証書遺言が向いています。
 遺言の無効リスクや手続の手間を避けたい方におすすめです。

自分の気持ちを手書きで残したい方

自筆証書遺言が適しています。
 法務局の保管制度を使えば安全性も確保できます。

家族の状況に複雑な事情がある方

(再婚、相続人の多さ、事業承継など)
専門家立ち会いのもとで公正証書遺言を作成するのが安心です。

5. 司法書士が関わるとどう違う?

 司法書士が関与する遺言作成は、単に「文面を整える」だけではありません。
特に以下のような部分でサポートできます。

  • 法的に有効な文案の作成補助
  • 財産・相続人調査(登記簿・戸籍確認)
  • 公証人との調整・証人の手配
  • 作成当日の同行支援

※相続に関する状況というのは、各相続別々です。そうなると、各個人の状況を踏まえ、要望に沿った形での遺言書が必要となるわけです。その設計をするお手伝いをしております。

 つまり、「自分で書く不安」と「公証役場の手間」を同時に減らすことができるのです。
 また、司法書士は「遺言執行者」として指定されることも多く、
作成後も実際の手続きまで一貫してサポートできます。

6. まとめ──「書いたあと」が大事になる

遺言書は「書いて終わり」ではありません。
保管・更新・家族への伝え方までを含めて考えてこそ、初めて意味を持ちます。

形式を選ぶときには、**「誰に何を伝えたいか」**という目的から考えること。
そして、家族が実際にその遺言を安心して使える形にすること。

そのための方法が、あなたに合う遺言の形です。

次回は、最終回として
「"想いを伝える"遺言──財産以上に残したいメッセージ」
をテーマに、心のこもった遺言書の書き方をお届けします。

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