相続の相談でいちばん多い失敗は、
「税理士に行ったら登記の話ができず、司法書士に行ったら税金が分からない」ことです。
「健全化」という視点で考える相続⑦ 知恵を紡ぐ専門家の役割 ――一人の専門家がすべてを解決するのではなく、必要な知恵をつなぐ

相続について相談したい。
そう思ったとき、最初に誰に相談すればよいのでしょうか。
相続税なら税理士。
不動産の登記なら司法書士。
争いになれば弁護士。
不動産の売却なら不動産会社。
介護なら介護の専門家。
会社の承継なら、事業承継の専門家や金融機関。
それぞれの分野には、それぞれの専門家がいます。
これは、とても良いことです。
専門家が専門分野を持つからこそ、複雑な問題にも対応できます。
しかし、相談する側からすると、こんな疑問が生まれることがあります。
「結局、私は誰に相談すればいいの?」
そして、もう一つの問題があります。
例えば、
税理士に相談したら税金の話。
司法書士に相談したら登記の話。
不動産会社に相談したら売却の話。
それぞれの専門家から、それぞれの立場でアドバイスを受ける。
しかし、それらを**「自分の人生」という一つの地図に重ね合わせるのは、誰なのでしょうか。**
ここに、これからの専門家に求められる役割があるのではないでしょうか。
第1回から第6回まで、私たちは、
相続対策
家族の健全化
会社の健全化
不動産の健全化
人間関係の健全化
そして、
未来設計
について考えてきました。
最後の第7回では、
「では、その未来を実現するために、専門家は何をすべきなのか」
という問題について考えます。
目次
- 専門家には、それぞれの専門分野がある
- しかし、相談者の問題は「専門分野」では分かれていない
- 「手続き」から考えると、全体像が見えなくなる
- 必要なのは「知恵をつなぐ」という発想
- ワンストップ提案とは何か
- アイリスが目指す「未来設計」の入口
- 専門家の役割は「答えを出すこと」だけではない
- まとめ――知恵を紡ぎ、未来へ橋を架ける
1.専門家には、それぞれの専門分野がある

相続や生前対策には、実に多くの専門分野が関係します。
例えば、
司法書士
不動産登記や相続登記、会社の登記、遺言・成年後見など、法律手続きの一部を支えます。
税理士
相続税や贈与税、事業承継に関する税務などを支えます。
弁護士
相続人間の争いや遺産分割、紛争解決などを支えます。ほぼオールマイティに活動できますが、得意分野がありますので、事前に確認が必要。
行政書士
遺言、許認可、行政手続きなど、さまざまな場面で支援します。
不動産の専門家
不動産の売却、購入、活用などを支えます。
介護・福祉の専門家
介護や生活支援など、「その人がどう暮らすのか」を支えます。
金融機関
資産管理、融資、事業承継など、金融面から支えます。
このように、それぞれの専門家には、それぞれの役割があります。
事業承継についても、中小企業庁は、税理士・公認会計士・中小企業診断士、金融機関など、複数の専門家や支援機関に相談しながら進めることを案内しています。
つまり、
一人の専門家だけですべてを解決するのではなく、必要な専門家が関わる。
これは、これからの相続・生前対策において、ますます重要になっていく考え方です。
2.しかし、相談者の問題は「専門分野」では分かれていない

ここが、非常に重要なところです。
専門家から見ると、
「これは相続登記の問題です。」
「これは税務の問題です。」
「これは不動産の問題です。」
「これは事業承継の問題です。」
と分けることができます。
しかし、相談者からすると、そうではありません。
例えば、
「父が亡くなりました。実家と土地があり、兄弟が3人います。父は会社も経営していました。母は認知症が進んでいます。会社の株式も父が持っています。これから何をすればいいのでしょうか。」
これは、一つの相談です。
ところが、この一つの相談の中には、
- 相続
- 不動産
- 相続登記
- 相続税
- 会社
- 自社株式
- 認知症
- 財産管理
- 家族関係
という、複数の問題が含まれています。
相談者にとっては、
「父が亡くなった」という一つの出来事
なのです。
専門家のように、
「これは税務」
「これは登記」
「これは会社」
と分類して考えているわけではありません。
だからこそ、
専門家側が相談者の問題を「つなげて考える」必要があります。
3.「手続き」から考えると、全体像が見えなくなる

専門家に相談すると、
「まず戸籍を集めましょう。」
「相続税の申告期限があります。」
「相続登記が必要です。」
「遺産分割協議書を作りましょう。」
といった具体的な話が始まります。
もちろん、これは重要です。
相続には期限がある手続きもあります。
登記が必要になる場合もあります。
税金についても検討しなければなりません。
しかし、
手続きから始めてしまうと、その人が本当に望んでいる未来が見えなくなることがあります。
例えば、
「実家をどうするのか」
という問題一つをとっても、
単に「誰が相続するのか」という問題ではありません。
その家に誰か住むのか。
売るのか。
貸すのか。
管理するのか。
将来的に介護が必要になったらどうするのか。
家族にとって思い出の場所なのか。
それとも、誰も使わない家なのか。
これらによって、選択肢は変わります。
だから、
「どんな手続きをするか」より先に、「どうしたいのか」を考える。
この順番が重要なのです。
4.必要なのは「知恵をつなぐ」という発想

専門家は、自分の専門分野について深い知識を持っています。
しかし、相談者の人生は、一つの専門分野だけでできているわけではありません。
相続には家族があります。
家族には暮らしがあります。
暮らしには住まいがあります。
住まいには不動産があります。
経営者であれば会社があります。
会社には従業員や取引先があります。
そして、そのすべてに財産や法律、税金が関係しています。
つまり、
すべてがつながっています。
だからこそ、専門家に必要なのは、
「自分の知識だけで答えを出すこと」
だけではありません。
「自分の専門外にある問題に気づき、その問題を解決できる専門家につなぐこと」
も重要な役割になります。
これを、私は
「知恵を紡ぐ」
という言葉で表したいと思います。
一人ひとりの専門家が持っている知識を、一本の糸のようにつないでいく。
そして、それを相談者の未来という一つの形にしていく。
それが、「知恵を紡ぐ専門家」の役割なのではないでしょうか。
5.ワンストップ提案とは何か
ここで、アイリスが目指している、
「ワンストップ提案」
という考え方についてお話しします。
ワンストップというと、
「一つの場所ですべての手続きができる」
という意味で捉えられることがあります。
しかし、アイリスが考えるワンストップは、少し違います。
すべてをアイリスだけで解決することではありません。
むしろ、
「最初の相談窓口で全体像を整理し、必要な専門家につなぎながら、一つの未来に向かって支援していく」
という考え方です。
例えば、
相続登記が必要
→ アイリスが対応する。
相続税の検討が必要
→ 税理士と連携する。
不動産を売却したい
→ 不動産の専門家につなぐ。
紛争になっている
→ 弁護士につなぐ。
介護や生活支援が必要
→ 必要な支援機関につなぐ。
会社を次の世代へ引き継ぎたい
→ 税務・法務・金融など、必要な専門家と連携する。
このように、
相談者が一人で専門家を探し回るのではなく、必要なところへ橋を架けていく。
これが、アイリスが考えるワンストップ提案です。
中小企業庁も、事業承継・引継ぎ支援センターが税理士、弁護士、金融機関、民間支援機関などと連携しながら一貫した支援を行う仕組みを示しています。
つまり、専門家同士が連携することは、特別な考え方ではありません。
これからは、
「誰に頼むか」だけではなく、「誰と誰がつながって支えるか」
が重要になっていくのではないでしょうか。
6.アイリスが目指す「未来設計」の入口

では、なぜアイリスが司法書士・行政書士事務所でありながら、「未来設計」という考え方を掲げるのでしょうか。
それは、
手続きをすることが目的ではないからです。
例えば、
「相続登記をしてください。」
という相談があったとします。
もちろん、登記を適切に行うことは重要です。
しかし、
「なぜ、この不動産をこの人が相続するのか。」
「この家を今後どうするのか。」
「他の家族はどう考えているのか。」
「将来的に空き家になる可能性はないか。」
というところまで考えると、相談の意味が変わってきます。
登記は「手続き」です。
その先にあるのが、
「その人の未来」
です。
だからこそ、アイリスでは、
「相続=亡くなった後の手続き」
ではなく、
「相続=これからの家族の未来を考えるきっかけ」
として捉えたいと考えています。
そして、その入口になるのが、
未来設計
です。
7.専門家の役割は「答えを出すこと」だけではない

専門家というと、
「正しい答えを教えてくれる人」
というイメージがあります。
もちろん、それは専門家の重要な役割です。
法律について正確に説明する。
税金について正確に説明する。
手続きを正確に行う。
これは当然必要です。
しかし、未来設計の時代には、それだけでは足りないのではないでしょうか。
相談者自身が、
「私はどうしたいのか。」
「家族にはどうしてほしいのか。」
「何を大切にしたいのか。」
「何を残したいのか。」
「何を手放してもいいのか。」
を考えることも重要です。
そのために専門家ができることがあります。
それは、
「問いを投げかけること」
です。
「この家は、本当に残したいですか?」
「将来、誰が管理しますか?」
「お子さんは会社を継ぎたいと思っていますか?」
「相続税だけでなく、相続後の生活まで考えていますか?」
「もし判断能力が低下したら、誰に財産管理を任せたいですか?」
こうした問いによって、
本人も気づいていなかった問題が見えてくることがあります。
専門家の役割は、
答えを押しつけることではありません。
相談者が自分自身の答えを見つけるための、
「伴走者」になること。
それも、これからの専門家に求められる役割なのではないでしょうか。
8.まとめ――知恵を紡ぎ、未来へ橋を架ける

ここまで7回にわたって、
第1回
相続対策の目的は節税ではない
第2回
家族の健全化とは何か
第3回
会社の健全化と相続
第4回
不動産の健全化
第5回
人間関係の健全化
第6回
未来設計という考え方
そして今回、
第7回
知恵を紡ぐ専門家の役割
について考えてきました。
振り返ってみると、最初は「相続」という一つのテーマから始まりました。
しかし、相続を深く考えていくと、
家族が見えてきます。
会社が見えてきます。
不動産が見えてきます。
人間関係が見えてきます。
そして最後には、
「自分はこれから、どう生きたいのか」
という問いにたどり着きます。
つまり、相続は人生の一部分なのです。
だからこそ、相続だけを見ていてはいけない。
その人の人生を見る。
その家族を見る。
その会社を見る。
その地域を見る。
そして、その人が望む未来を見る。
そのうえで、
「では、何が必要なのか」
を一緒に考える。
そこに専門家の役割があるのだと思います。
専門家は「手続きをする人」だけではない
専門家は、法律や税金の知識を持っています。
しかし、その知識だけでは、人の未来をつくることはできません。
税理士には税理士の知恵があります。
司法書士には司法書士の知恵があります。
弁護士には弁護士の知恵があります。
不動産の専門家には、不動産の知恵があります。
介護や福祉の専門家にも、その道の知恵があります。
金融機関にも、金融の知恵があります。
それぞれの知恵を持ち寄る。
そして、
一人の人の未来のために、一つの方向へつないでいく。
それが、
「知恵を紡ぐ」
ということなのではないでしょうか。
アイリスが目指す「ワンストップ提案」
アイリス国際司法書士・行政書士事務所が目指しているのは、
「何でも自分たちだけで解決する事務所」
ではありません。
むしろ、
「必要な専門家とつながり、相談者を一人にしない事務所」
です。
相談を受けたとき、
「これは私の専門ではありません。」
で終わらせるのではなく、
「この問題なら、この専門家につなぎましょう。」
「ここは税理士と一緒に考えましょう。」
「この部分は不動産の専門家に相談しましょう。」
「この問題は弁護士に相談したほうがいいでしょう。」
と、必要なところへ橋を架ける。
そして、その中心にあるのが、
「この人は、これからどんな人生を送りたいのか」
という視点です。
これが、アイリスの考える
「未来設計」
です。
「未来へ踏み出す人の、橋渡しを続けます。」
専門家がすべてを決めるのではありません。
人生を決めるのは、本人です。
家族の未来を決めるのも、家族自身です。
専門家ができるのは、
その人が納得できる未来へ踏み出すために、必要な知識と人をつなぐこと。
迷っているときに、一緒に整理すること。
知らない制度を伝えること。
必要な専門家につなぐこと。
そして、本人が決めた未来へ踏み出すための橋を架けること。
それが、私たちアイリスの役割だと考えています。
相続は、人生の終わりから始まるものではありません。
むしろ、
これからの人生を考えるきっかけ
なのかもしれません。
「まだ元気だから大丈夫。」
「相続なんて、まだ先。」
そう思っている今だからこそ、
一度立ち止まって考えてみませんか。
あなたは、これからどんな未来を生きたいですか?
その答えが見つかったとき、
相続対策も、
生前対策も、
不動産対策も、
家族との関係も、
事業承継も、
一つの「未来設計」としてつながっていくはずです。
シリーズ「健全化という視点で考える相続」を終えて
相続を考えるとき、
「いくら節税できるか」
だけではなく、
「家族は健全な関係を保てるか。」
「会社は健全な状態で次の世代につながるか。」
「不動産は次の世代の負担にならないか。」
「人間関係はこれからも続いていくのか。」
「そして、自分自身はどんな未来を生きたいのか。」
そこまで考えてみる。
そうすると、相続は単なる「財産の承継」ではなくなります。
人生から人生へ、知恵や思い、財産、仕事、暮らしをつないでいくこと。
それが相続なのではないでしょうか。
そして、その「つなぐ」という仕事を、専門家同士の知恵を紡ぎながら支えていく。
それが、アイリスの目指す
「未来設計」
です。
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