【第3回】主体性を求める上司が、主体性を奪っている?部下が指示待ちになる職場の矛盾
経営者や管理職の方であれば、一度はそう感じたことがあるのではないでしょうか。

「もっと自分で考えて行動してほしい」
経営者や管理職の方であれば、一度はそう感じたことがあるのではないでしょうか。
言われたことしかやらない。何をするにも指示を求める。問題が起きても、自分で解決しようとしない。
そのような部下を見ていると、つい「もっと主体性を持て」と言いたくなるものです。
しかし、ここで一つ考えてみたいことがあります。
部下が自分で考え、行動したとき、私たちは本当にその判断を尊重しているでしょうか。
「自分で考えろ」と言いながら、自分の考えと違う方法を選ぶと否定する。
「失敗を恐れるな」と言いながら、失敗すると厳しく責任を追及する。
「仕事を任せる」と言いながら、進め方の細部まで指示する。
もし、このようなことが繰り返されているとしたら、部下が自分で考えて行動しなくなるのも、無理はないのかもしれません。
部下の主体性を育てるためには、本人に努力を求めるだけでなく、上司自身が主体性を発揮できる環境をつくっているかを振り返る必要があります。
今回は、主体性を求める上司が、知らず知らずのうちに部下の主体性を奪ってしまう矛盾について考えてみたいと思います。
目次
1.「自分で考えろ」と言うだけでは主体性は育たない

部下に主体性を求めるとき、よく使われる言葉があります。
それが「自分で考えろ」という言葉です。
確かに、仕事をするうえで、自分で考えることは重要です。上司がすべての判断をしなければ仕事が進まない組織では、上司の負担が大きくなり、部下も自分で考える機会を失ってしまいます。
しかし、「自分で考えろ」と伝えるだけで、主体性が育つわけではありません。
例えば、ある仕事について、部下が自分なりに考えた方法で進めようとしたとします。
ところが、上司は「そんなやり方ではダメだ。私の言うとおりにやりなさい」と指示しました。
部下は、次からどうするでしょうか。
自分で考えるよりも、最初から上司に確認した方がよいと考えるかもしれません。
別の方法を提案しても否定されるのであれば、余計なことをせず、指示されたとおりに動く方が安全だからです。
このような経験が繰り返されれば、部下は自分で考えることをやめ、上司の判断を待つようになる可能性があります。
つまり、上司が主体性を求めながら、実際には自分で考える必要のない環境をつくっているのです。
もちろん、部下の考えが常に正しいわけではありません。業務上のルールや安全性、顧客への影響など、上司が修正を求めるべき場面もあります。
大切なのは、部下の判断をすべて認めることではなく、自分で考えたことを伝え、検討し、必要に応じて修正できる機会を与えることではないでしょうか。
2.部下の主体性を奪ってしまう上司の5つの特徴

では、どのような上司の関わり方が、部下の主体性を発揮しにくくしてしまうのでしょうか。
ここでは、代表的な5つの例を考えてみます。
① 自分と違う考えを認めない
部下が自分なりの方法を提案しても、「私のやり方が正しい」と最初から否定してしまう。
経験豊富な上司であれば、自分の方法に自信があるのかもしれません。しかし、経験があることと、常に自分の判断が最善であることは同じではありません。
部下の提案に問題があるなら、その理由を説明し、よりよい方法を一緒に考えることもできます。
自分と異なる意見を聞く姿勢がなければ、部下は次第に意見を出さなくなるでしょう。
② 細かいことまですべて指示する
仕事の手順から進め方、細かな判断まで、上司がすべて決めてしまう。
このような管理方法は、一定の品質を保つうえで有効な場合もあります。特に、経験の浅い社員や、間違いが重大な結果につながる業務では、具体的な指示が必要です。
しかし、どのような仕事でも細かく指示し続ければ、部下が自分で判断する機会は少なくなります。
やがて、部下は「指示されたことだけをやればよい」と考えるようになるかもしれません。
③ 失敗すると厳しく責任を追及する
「失敗してもいいから挑戦しろ」と言っていた上司が、実際に失敗すると厳しく叱責する。
このような経験をすれば、部下は挑戦することに慎重になります。
もちろん、重大なミスや確認不足を放置してよいわけではありません。しかし、失敗の原因を分析することと、失敗した人を責めることは別です。
失敗から学ぶ機会がなければ、部下は自分で判断するよりも、責任を負わない方法を選ぶようになる可能性があります。
④ 結果だけで評価し、考えた過程を見ない
仕事の成果は重要です。しかし、結果だけを見て評価していると、適切に考えて行動した人が、たまたま結果を出せなかった場合に、その努力や判断まで否定してしまうことがあります。
反対に、十分に考えずに行動しても、偶然うまくいけば評価されることもあります。
主体性を育てるためには、結果だけでなく、どのような情報を集め、何を考え、どう判断したのかにも目を向けることが大切です。
⑤ 任せたはずなのに、途中で口を出す
「この仕事は君に任せる」と言いながら、部下が進めている途中で何度も指示を変更する。
上司としては、失敗を防ぎたい、よりよい結果を出したいという気持ちがあるのかもしれません。
しかし、任された側からすれば、自分で考えて進めても、最後には上司の判断に置き換えられてしまうと感じるでしょう。
こうした細かな介入を繰り返す管理方法は、一般にマイクロマネジメントと呼ばれます。
必要な確認や支援は大切ですが、過度に細部まで管理すると、部下が自分で考える余地を狭めてしまうことがあります。
3.なぜ上司は部下に任せることができないのか

ここまで読むと、部下の主体性を奪う上司が悪いように感じるかもしれません。
しかし、上司が細かく指示したり、部下の判断に口を出したりする背景にも、さまざまな事情があります。
例えば、部下に任せて失敗すれば、上司自身が責任を問われるかもしれません。
顧客に迷惑をかけることも、会社に損失を与えることも避けたいでしょう。
また、自分が経験を積んで身につけた方法があるからこそ、部下にも同じ方法で仕事を進めてほしいと思うこともあります。
さらに、時間に余裕がない職場では、部下に考えさせるより、自分で指示した方が早いと感じるかもしれません。
こうした事情を考えると、上司が細かく管理することには、それなりの理由があると分かります。
問題は、管理すること自体ではありません。
短期的に仕事を効率よく進めることと、長期的に社員が自分で考えて行動できるようになることは、必ずしも同じではないという点です。
上司がすべてを判断すれば、目の前の仕事は早く進むかもしれません。しかし、それを続けていれば、部下が判断する経験を積む機会は減っていきます。
そして、部下が育たないから、上司はますます細かく指示するようになる。
その結果、部下はますます指示を待つようになる。
このような循環に陥っていないか、考えてみる必要があります。
4.管理することと、任せることは違う

部下の主体性を育てるためには、管理をやめればよいのでしょうか。
もちろん、そうではありません。
組織には、守るべきルールがあり、品質や安全を確保する責任があります。仕事の内容によっては、細かな手順を守ることが不可欠です。
重要なのは、何を管理し、何を任せるのかを区別することです。
例えば、仕事の目的、守るべき期限、品質基準、予算、法令や安全に関するルールなどは、上司が明確に示す必要があるでしょう。
一方、その範囲内での具体的な進め方については、部下に考える余地を与えることができます。
上司が「何を達成する必要があるのか」を明確にし、部下が「どのように達成するのか」を考える。
そして、判断が難しい場合や、想定外の問題が発生した場合には、相談できるようにしておく。
これが、管理と任せることを両立させる一つの方法です。
ただし、任せる範囲は、社員の経験や能力、仕事のリスクに応じて調整する必要があります。
経験の浅い社員には具体的な指示を出し、経験を積むにつれて判断できる範囲を広げていく。
このように段階的に任せることで、部下は実践を通じて判断力を身につけていくことができます。
任せるとは、放置することではありません。
必要な支援を行いながら、本人が自分で考え、行動する機会をつくることなのです。
5.部下の主体性を育てる上司に必要なこと
では、上司は具体的にどのようなことを意識すればよいのでしょうか。
部下の考えを先に聞く
問題が起きたとき、すぐに答えを教えるのではなく、「あなたはどう考えますか」と尋ねてみる。
部下が自分なりの考えを説明することで、上司は本人の理解度や判断の根拠を把握できます。
判断できる範囲を明確にする
何を自分で決めてよいのか、どのような場合に相談すべきなのかを明確にする。
判断の範囲が分からなければ、部下は失敗を恐れて、何でも上司に確認するようになるかもしれません。
結論だけでなく、考え方を話し合う
部下の判断が間違っていた場合にも、結論だけを否定するのではなく、どのような情報を基に判断したのかを確認する。
そのうえで、何を見落としていたのか、次はどうすればよいのかを一緒に考えます。
自分と異なる方法にも耳を傾ける
部下の方法が自分の方法と違っていても、目的を達成できるのであれば、必ずしも修正する必要はありません。
自分の経験を伝えることは大切ですが、それを唯一の正解として押しつけない姿勢も必要です。
自分自身の関わり方を振り返る
部下が自分から動かないとき、本人の意識だけを問題にしていないでしょうか。
指示がなければ動けない状態を、上司自身がつくっていないでしょうか。
部下の行動を変えたいのであれば、まず上司自身の行動も振り返ってみることが大切です。
6.主体性を求める前に、上司自身が考えたいこと

ここまで、上司が部下の主体性を奪ってしまう原因と、主体性を育てるための関わり方について考えてきました。
もちろん、部下が主体的に行動できない理由は、上司だけにあるわけではありません。
本人の経験不足や知識不足、失敗を避けたいという気持ちなども関係するでしょう。
しかし、上司には、部下が成長できる環境を整えるという役割があります。
部下に主体性を求めるのであれば、自分で考え、判断し、行動する機会を与えているかを振り返る必要があります。
そして、もう一つ大切なことがあります。
それは、部下が自分の考えを持つことを、本当に歓迎しているかということです。
自分と違う考えを述べたとき。
自分とは違う方法を提案したとき。
自分が予想していなかった判断をしたとき。
そのような場面で、上司はどのように対応しているでしょうか。
部下が自分で考えることを求めながら、自分の考えに従うことだけを望んでいるとしたら、そこには矛盾があります。
主体性を育てるということは、自分の考えを部下に押しつけることではありません。
部下が考え、判断し、必要なときには自分とは異なる意見を述べられる関係をつくることでもあります。
まとめ:部下を変える前に、任せる勇気を持つ
部下に主体性を求めながら、実際には細かな指示を出し、自分と違う判断を認めず、失敗を厳しく責めてしまう。
そのような関わり方を続けていれば、部下は自分で考えることを避け、指示を待つようになる可能性があります。
主体性を育てるためには、本人の意識を変えるだけでなく、上司自身の関わり方を見直すことも必要です。
もちろん、部下にすべてを任せればよいわけではありません。
仕事の目的や守るべき基準を明確にし、必要な支援を行いながら、本人が判断できる範囲を少しずつ広げていくことが大切です。
「自分で考えろ」と言うのであれば、自分で考えた結果を受け止める覚悟も必要なのではないでしょうか。
部下の主体性を育てることは、上司にとって、自分の思いどおりに動かすこととは違う難しさを伴います。
しかし、社員が自分で考え、行動できるようになれば、組織全体の可能性も広がっていくはずです。
最後に、経営者や管理職の皆さんに問いかけたいと思います。
あなたは部下に主体性を求めながら、知らず知らずのうちに、その主体性を奪ってはいないでしょうか。
次回は、職場の話からさらに視野を広げ、「指示を待つ人生から、自分で選ぶ人生へ」というテーマで、主体性と自分らしい生き方について考えていきます。

経営者や管理職の方であれば、一度はそう感じたことがあるのではないでしょうか。
上司から指示される前に動く。自分で考えて仕事を進める。言われたことだけでなく、自分にできることを探す。
「指示を待ってしまう人」と「自分で考えて行動する人」には、どのような違いがあるのでしょうか。
「言われたことしかやらない」
「指示がなければ、自分から動こうとしない」
「もっと主体性を持って仕事をしてほしい」