【第4回】指示を待つ人生から、自分で選ぶ人生へ|自分らしく生きるために必要な主体性とは

2026年11月05日

これまで、指示待ち人間が生まれる原因や、主体性と自発性の違い、そして主体性を求める上司が、かえって部下の主体性を奪ってしまう矛盾について考えてきました。

これらは、一見すると職場や仕事に限った問題のように思えます。

しかし、少し視野を広げてみると、同じような問題は私たちの人生全体にも存在しているのではないでしょうか。

親に勧められた学校に進学する。

周囲が選んでいる仕事だから、自分もその仕事を選ぶ。

結婚する年齢や家を購入する時期について、世間一般の常識に合わせる。

定年を迎えたら、仕事を辞めて余生を過ごす。

もちろん、こうした選択が間違っているわけではありません。周囲の意見を参考にすることも、社会の常識に従うことも、人生において大切なことです。

問題は、それらを自分で考え、納得したうえで選んでいるのか、それとも、深く考えることなく、周囲の期待や常識に従っているだけなのか、という点です。

今回は、職場での主体性というテーマから一歩踏み出し、人生を自分で選ぶことの意味について考えてみたいと思います。

目次

  1. 私たちは、知らないうちに周囲の期待に従っている
  2. 周囲に従うことと、自分で選ぶことは違う
  3. 自分で選ぶとは、好き勝手に生きることではない
  4. 主体性が失われると、人生はどうなるのか
  5. 自分で選ぶ人生を始めるための5つの問い
  6. 人生を自分で選ぶことは、いつからでもできる

1. 私たちは、知らないうちに周囲の期待に従っている

私たちは、成長する過程でさまざまな価値観を身につけます。

親から教えられたこと、学校で学んだこと、職場で求められること、社会の中で当たり前とされていること。

こうした価値観は、私たちが社会生活を送るうえで必要なものです。

しかし、その一方で、周囲から与えられた価値観が、自分自身の考え方になってしまうこともあります。

例えば、次のような考え方です。

  • いい学校を出て、安定した会社に就職することが幸せだ。
  • 仕事では、上司の期待に応えることが大切だ。
  • 人に迷惑をかけてはいけない。
  • 年齢に応じた生き方をするべきだ。
  • 老後に備えて、できるだけお金を使わずに生活するべきだ。

これらの考え方には、それぞれ合理的な理由があります。

ただし、すべての人に当てはまるわけではありません。

安定した会社で働くことに幸せを感じる人もいれば、自分で事業を始めることに生きがいを感じる人もいます。

お金を貯めることに安心を感じる人もいれば、健康なうちに旅行や趣味を楽しむことに価値を見いだす人もいます。

大切なのは、どちらが正しいかを決めることではありません。

自分にとって何が大切なのかを、自分自身で考えているかどうかです。

周囲の期待に応えることが、自分の望む生き方と一致しているのであれば、それも立派な選択です。

しかし、周囲に認められることばかりを優先し、自分が本当は何を望んでいるのかを考えなくなってしまうと、いつの間にか、誰かの期待を満たすための人生になってしまうかもしれません。

2. 周囲に従うことと、自分で選ぶことは違う

ここで、主体性について改めて考えてみましょう。

主体性とは、単に人の言うことを聞かず、自分の思いどおりに行動することではありません。

周囲の意見を聞き、社会のルールを理解し、そのうえで自分はどう考え、どう行動するのかを決めることです。

例えば、職場で上司から新しい仕事を任されたとします。

指示待ちの状態であれば、何をすればよいのか、どこまで進めればよいのか、すべての指示を待つかもしれません。

主体性がある人は、仕事の目的を理解し、自分で考え、必要な確認をしながら進めようとします。

人生においても、同じことがいえます。

親や友人から助言を受けたとき、周囲の意見だからと、そのまま受け入れる必要はありません。かといって、反対することが主体性でもありません。

その意見が自分にとって本当に意味のあるものなのかを考え、納得できれば取り入れればよいのです。

納得できなければ、別の選択肢を探してもよいでしょう。

主体性とは、他人の意見を拒絶する力ではなく、他人の意見を参考にしながら、自分の選択をつくる力なのです。

そして、自分で選ぶということは、必ずしも自分の希望がすべてかなうということではありません。

現実には、お金や時間、家族の事情、健康、仕事上の責任など、さまざまな制約があります。

その中で何を優先し、何を大切にするのか。

制約があるからこそ、自分で考え、選ぶことに意味があるのではないでしょうか。

3. 自分で選ぶとは、好き勝手に生きることではない

「自分らしく生きる」「自分の人生を生きる」という言葉を聞くと、周囲に気を遣わず、好きなことだけをして生きる姿を想像する人もいるかもしれません。

しかし、私は、自分で選ぶ人生とは、そのようなものではないと考えています。

私たちは、一人で生きているわけではありません。

家族がいて、職場の仲間がいて、友人がいて、地域社会とのつながりがあります。

自分の選択が、周囲の人に影響を与えることもあります。

だからこそ、自分の希望だけを優先するのではなく、周囲の人の思いや事情にも目を向ける必要があります。

例えば、仕事を辞めて新しいことに挑戦したいと思ったとき、家族の生活や将来への影響を考えることは大切です。

家族の事情を踏まえて、今は仕事を続けながら準備を進めるという選択もあるでしょう。

その場合、周囲の事情を優先したからといって、主体性がないわけではありません。

自分の希望と周囲への責任を理解したうえで、自分なりの判断をしているからです。

一方で、「家族が反対するから無理だ」「周囲にどう思われるかわからないからやめておこう」と、考えること自体を諦めてしまうのであれば、少し違います。

大切なのは、何を選ぶかだけではありません。

自分で考えたうえで、その選択に納得しているかどうかです。

また、自分で選んだ以上、思いどおりにならなかったときには、その結果を受け止める必要もあります。

もちろん、すべての結果を自分一人の責任として背負う必要はありません。予測できない出来事もあれば、自分ではどうにもならない事情もあります。

それでも、自分の選択を振り返り、必要であれば方向を変えていく。

そうした姿勢も、主体性の一つではないでしょうか。

4. 主体性が失われると、人生はどうなるのか

自分で考え、選ぶことを後回しにしていると、人生の節目で戸惑うことがあります。

例えば、定年退職を迎えたときです。

現役時代は、仕事上の役割があり、上司や同僚との関係があり、毎日の予定も決まっていました。

ところが、退職すると、それまで生活の中心にあった役割がなくなります。

そのとき初めて、「これから何をして過ごそうか」「自分は何を楽しみたいのだろうか」と考え始める人もいるでしょう。

もちろん、定年後にゆっくり過ごすことも、家族との時間を大切にすることも、素晴らしい生き方です。

問題は、仕事がなくなったことではありません。

仕事以外に、自分が何をしたいのか、何を大切にしたいのかを考える機会がなかったことです。

これは、定年後に限った話ではありません。

子育てが一段落したとき、転職を考えたとき、家族の介護に直面したとき、あるいは大きな病気や身近な人との別れを経験したとき。

これまで当たり前だと思っていた生活が変わると、自分の価値観を見直す必要が生まれることがあります。

だからこそ、何かが起きてから考えるのではなく、日頃から自分の人生について考えておくことが大切なのだと思います。

それは、将来の計画を完璧に立てるということではありません。

今の生活に満足しているのか。

これからも続けたいことは何か。

やってみたいと思いながら、後回しにしていることはないか。

そうした問いを、自分自身に投げかけてみることです。

人生には、思いどおりにならないことがたくさんあります。

しかし、自分の望みや価値観を知っていれば、変化に直面したときにも、何を大切にして次の一歩を踏み出すのかを考えやすくなります。

5. 自分で選ぶ人生を始めるための5つの問い

では、主体性を持って自分の人生を考えるためには、何から始めればよいのでしょうか。

難しいことをする必要はありません。

まずは、自分自身に次の5つの問いを投げかけてみてください。

① 今の生活で、大切にしたいことは何か

仕事、家族、健康、お金、趣味、友人とのつながり。

人によって、大切にしたいものは異なります。

まずは、今の自分が何を大切にしているのかを整理してみましょう。

② 本当はやってみたいのに、諦めていることはないか

旅行に行きたい、新しい趣味を始めたい、学び直したい、誰かとゆっくり話したい。

大きな夢でなくても構いません。

心のどこかに残っている「やってみたい」という気持ちに目を向けてみましょう。

③ その選択は、自分が望んだものか

今の仕事、暮らし方、人間関係。

それらを選んだ理由を振り返ってみてください。

周囲の期待や世間の常識を優先してきた部分があったとしても、責める必要はありません。

これからどうしたいのかを考えるための出発点にすればよいのです。

④ 何を変えれば、少し前に進めるだろうか

人生を大きく変えようとすると、難しく感じるものです。

しかし、すべてを一度に変える必要はありません。

毎週1時間、自分のための時間をつくる。気になっていた人に連絡する。新しいことについて調べてみる。

小さな行動から始めることができます。

⑤ その選択を、未来の自分はどう感じるだろうか

今の安心を優先するのか、将来の可能性を広げるのか。

どちらか一方が常に正しいわけではありません。

ただ、今の自分だけでなく、数年後の自分の視点から考えてみると、選択肢が広がることがあります。

この5つの問いに、すぐに答えを出す必要はありません。

考えているうちに、気持ちが変わることもあるでしょう。

それでよいのです。

自分の人生について、自分で考える時間を持つこと。それ自体が、主体性を取り戻す第一歩なのです。

6. 人生を自分で選ぶことは、いつからでもできる

ここまで、主体性を持って自分の人生を選ぶことについて考えてきました。

しかし、これまで周囲の期待に応えてきた人や、与えられた役割を一生懸命に果たしてきた人にとっては、「今さら自分の生き方を考えても遅いのではないか」と感じることがあるかもしれません。

私は、そうは思いません。

これまでの人生には、そのときどきの事情や責任があったはずです。

家族を養うために働いた人もいるでしょう。

子どものために、自分の希望を後回しにしてきた人もいるでしょう。

生活を守るために、安定した道を選んできた人もいるでしょう。

それらは、主体性がなかったということではありません。その時点で、自分なりに考え、選んできた結果かもしれません。

大切なのは、過去の選択を否定することではなく、これからの選択を考えることです。

年齢を重ねれば、若い頃と同じ選択ができるとは限りません。

体力や時間、お金の使い方も変わってきます。

しかし、選択肢が変わることと、選ぶことができなくなることは同じではありません。

今の自分にできることは何か。

これから、どんな時間を過ごしたいのか。

誰とつながり、何を楽しみ、何を次の世代に残したいのか。

そうしたことを考えるのに、遅すぎるということはないのではないでしょうか。

人生を自分で選ぶということは、必ずしも大きな決断をすることではありません。

今日、何に時間を使うのか。

誰と話すのか。

どんなことを学ぶのか。

そして、これからの人生で何を大切にしたいのか。

一つひとつの選択を通じて、自分の人生を少しずつ形づくっていくことなのだと思います。

おわりに|主体性とは、自分の人生に向き合うこと

「指示待ち人間」という言葉は、職場で自分から動こうとしない人を指して使われることがあります。

しかし、主体性について考えていくと、それは単に仕事の進め方だけの問題ではないことがわかります。

自分は何を大切にしたいのか。

何を望み、何を選び、どんな人生を歩みたいのか。

そうした問いに向き合うことも、主体性の一つです。

もちろん、私たちは何もかも自分一人で決められるわけではありません。周囲の人の助けが必要なときもあれば、自分では選べない事情に直面することもあります。

それでも、自分にできることを考え、周囲の人と話し合い、納得できる道を探していくことはできます。

誰かの指示を待つだけではなく、誰かの期待に応えるだけでもなく、自分自身の人生について考え、自分なりの答えを探していく。

その積み重ねが、自分らしい人生につながっていくのではないでしょうか。

私自身も、これまでの人生で、さまざまな選択をしてきました。

その中には、周囲から見れば意外な選択もあったかもしれません。

今回は最後に、私自身が経験した、ある一人の青年との出来事をご紹介したいと思います。

司法書士試験に挑戦していた大学生との出会い。

勉強の場面では、自分で考え、工夫し、目標を達成した彼。

ところが、仕事の場面では、意外な一面が見えてきました。

なぜ、同じ人なのに、ある場面では主体的に行動でき、別の場面では指示を待ってしまうのでしょうか。

そして、その青年は、その後どのような道を選んだのでしょうか。

主体性は、本人の性格だけで決まるものなのか。それとも、置かれた環境や経験によって変わるものなのか。

次回は、私自身の実体験を通じて、このシリーズの最後を締めくくりたいと思います。

アイリス人生研究所

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