ネットニュースで見た生前贈与の間違い

2023年12月14日

先日、ニュースの記事を読んでいて、生前贈与について書かれているものがありました。その中で、生前贈与について、「相続人への贈与は令和6年1月1日で持ち戻しが7年に引き上げられるので、相続人以外の孫に贈与すれば問題ない」と書かれていました。以前、法律・税務相談の際に「相続人でない方への生前贈与の問題点」を指摘されていたことを思い出しましたが、その点については全く触れられていませんでした。その問題点について触れたいと思います。

目次

1.令和6年1月1日から生前贈与が変わる

2.確かに生前贈与変更の対象は相続人だが・・・・・

3.まとめ


1.令和6年1月1日から生前贈与が変わる

 令和6年1月1日より、暦年贈与・相続時精算課税の取り扱いが変わります。

 改正される内容は、以下の通りです。

①暦年贈与制度

 暦年贈与制度の内容自体は変わらないのですが、組み戻される期間が、現状の3年から7年に拡大いたします。何が問題なのかと言いますと、今まで相続税対策で、毎年少しづつ暦年贈与制度を使い、財産を目減りさせることで相続税っ対策としていたましたが、期間が拡大したことで贈与期間が短いと、対策した財産全てが相続財産に組み入れられてしまう点です。対策を始めてから7年以上かけないと、意味がなくなってしまうというわけです。

➁相続時精算課税

 (令和5年12月31日までに計算式)

  {(受贈財産の価額)-(特別控除額2500万円※生涯通算)}×税率

 (令和6年1月1日以降の計算式)

  {(受贈財産の価額)-(毎年基礎控除110万円)

            ―(特別控除額2500万円※生涯通算)}×税率

 新しい相続時精算課税制度を選択した場合、毎年の基礎控除110万円分が相続税対策として効力が出てくるというものになっています。

 また、暦年贈与と相続時精算課税を比較すると、その要件が異なります。いかに比較表を示します。

(暦年贈与制度と相続時精算課税制度)

 ※ただし、現状ではその取扱いは明確ではありません。今後、通達等で取り扱いが明確になってくると思われますので、本制度をご利用の際は、税理士に事前に確認をするようにしてください。

2.確かに生前贈与変更の対象は相続人だが・・・・・

 暦年贈与制度には、比較表を見てもわかるように、誰から誰にという要件が、相続時精算課税制度と異なり、ありません。

 今回の暦年贈与の変更である7年持ち戻しについては、相続人が対象となるので、相続人以外にあげればいいんじゃないのか?というご質問がありますが、以前、相続相談時に税理士先生がこの問題に答えていた内容を引用して、問題点を考えてみます。

 税理士先生「確かに、相続人以外の配偶者やお孫さんのように、贈与時点で相続人ではない方に贈与するのも一つの手だと考えるのもわかります。しかし、まず、配偶者に関してですが、現状円満な家族関係であっても、離婚するかもしれないというリスクがあります。また、お孫さんへの贈与も、お子様が贈与者より先に亡くなったのでは、お孫様は相続人になってしまいます。それに、お孫様が未成年の場合、贈与財産を管理するのが親になりますので、通帳などを実質両親が管理していた場合、お子様の名義預金となってしまい、結局相続人への贈与と税務署に判断されてしまうかもしれません。・・・・」

 横で聞いていて「なるほど」と聞き入ってしまいました。

3.まとめ

 先日、暦年贈与制度と相続時精算課税制度が変わる記事を書きましたが、その辺りから意識していたせいか、ネット記事の情報の内容を確認するようになりました。その中には今回のように、問題点を論じずにメリット部分のみを記載したものも少なくありません。

 生前贈与の対策をご検討の方は、相続専門の税理士のアドバイスを必ず受けることをお勧めいたします。

 アイリスでは、ワンストップ事務所として、相続専門の税理士先生をご紹介することができます。相続誠意文の税理士先生の無料相談会のご案内もしておりますので、お気軽にご連絡ください。

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