【地方の相続問題 第2回】相続した農地 ~耕さない土地が地域を困らせる~

2026年09月03日

「父から田んぼを相続したけれど、自分は農業をしていません。」

香川県でも、このようなご相談が年々増えています。農地は宅地とは異なり、自由に売却や活用ができるわけではありません。耕作する人がいなくなれば、農地は地域全体にも影響を及ぼす存在になります。今回は、相続した農地が抱える問題と、次の世代へ負担を残さないための「未来設計」について考えてみましょう。

目次

1.相続した農地が増えている背景

2.農地を放置すると起こる問題

3.農地を活かすための解決策

4.「相続してから」では遅い理由

5.まとめ~農地も未来へ引き継ぐ財産です~


1.相続した農地が増えている背景

香川県は温暖な気候に恵まれ、昔から米づくりや野菜づくり、果樹栽培など農業が盛んな地域です。

しかし近年では、高齢化や後継者不足により、「親は農業を続けていたけれど、子どもは会社勤めで農業をしない」という家庭が増えています。

その結果、

「田んぼだけを相続した。」

「畑を相続したけれど使い道が分からない。」

というご相談を多くいただくようになりました。

農地は土地であることに変わりありませんが、宅地とは異なり農地法による制限があるため、自由に売却や利用ができるものではありません。

「土地だから何とかなるだろう。」

そう考えていると、思わぬ負担を抱えてしまうことがあります。

2.農地を放置すると起こる問題

農地は、耕作されなくなると様々な問題が発生します。

(1)耕作放棄地になる

農業をする人がいなければ、農地はすぐに耕作放棄地となります。

一度荒れてしまうと元の状態へ戻すには、多くの時間と費用が必要になります。

(2)雑草が伸びる

管理されていない農地では雑草が生い茂ります。

夏場には背丈ほどまで伸びることもあり、周辺の景観を損ねるだけでなく、害虫の発生原因にもなります。

近隣の農地へ雑草の種が飛び、周囲の農業にも影響を与えることがあります。

(3)鳥獣被害が増える

草木が繁茂すると、イノシシやシカなどの野生動物が住み着きやすくなります。

香川県でも鳥獣被害は年々課題となっており、放置された農地がその一因となることもあります。

これは個人の問題だけではなく、地域全体の問題へ発展する可能性があります。

(4)近隣への影響

農地は一枚だけで存在しているわけではありません。

周囲には、今も農業を続けている方々がいます。

一つの農地が荒れることで、

  • 雑草の繁殖
  • 害虫の発生
  • 用水路の管理

など、近隣へも影響を与えてしまいます。

地域との信頼関係にも関わる問題なのです。

(5)固定資産税などの維持費

「使っていないから費用はかからない。」

そう思われる方もいますが、農地を所有している以上、固定資産税や管理費用は発生します。

さらに、草刈りや管理を業者へ依頼すれば、その費用も必要になります。

使っていない土地が、毎年の負担になってしまうのです。

3.農地を活かすための解決策

農地を相続したからといって、必ず自分で耕作しなければならないわけではありません。

大切なのは、早めに方向性を考えることです。

農地中間管理機構を活用する

農地を借り受けたい担い手と、貸したい所有者を結びつける仕組みがあります。

活用できるケースでは、有効な選択肢の一つになります。

農地を貸す

地域の農家へ貸し出すことで、農地を維持しながら活用できる場合があります。

農地を遊ばせないことは、地域農業を守ることにもつながります。

売却を検討する

条件が整えば、農地を必要としている方へ売却できる可能性があります。

農地法の手続きが必要になるため、早めの相談が重要です。

農地転用を検討する

立地や条件によっては、農地以外の用途へ変更できるケースもあります。

ただし、農地転用には許可が必要となるため、事前の確認が欠かせません。

生前整理を進める

親御さんが元気なうちであれば、

「この農地をどうしたいのか。」

という意思を家族で共有できます。

生前に方向性を決めておくことで、相続後の負担を大きく減らすことができます。

4.「相続してから」では遅い理由

農地は、相続が発生してから慌てて考えても、すぐに解決できる問題ではありません。

売却にも時間がかかります。

貸したくても借り手がすぐ見つかるとは限りません。

農地転用も、条件や許可が必要です。

だからこそ、「その時になったら考えよう」ではなく、「元気な今から家族で話し合う」ことが何より重要です。

未来設計とは、相続人が困らないように準備することでもあります。

農地を「負担」として残すのではなく、「地域や家族の未来につながる財産」として活かす方法を考えることが、生前対策の大きな目的なのです。

5.まとめ~農地も未来へ引き継ぐ財産です~

農地は、先祖代々受け継がれてきた大切な財産です。

しかし、耕作する人がいなくなれば、その価値を十分に活かすことはできません。

農地の問題は、所有者だけではなく、地域の環境や農業にも大きな影響を与えます。

だからこそ、「相続してから考える」のではなく、「相続する前から考える」ことが重要です。

未来設計とは、財産を残すことだけではありません。

次の世代が困らず、地域とのつながりも大切にしながら財産を引き継ぐことです。

農地についても、ぜひ一度ご家族で話し合う機会を持ってみてはいかがでしょうか。

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