相続の相談でいちばん多い失敗は、
「税理士に行ったら登記の話ができず、司法書士に行ったら税金が分からない」ことです。
家族に自己愛性パーソナリティの傾向がある場合 ~相続・介護・お金の問題を「健全化」という視点で考える~

これまでの3回では、自己愛性パーソナリティの特徴や心理、そして付き合い方についてお話ししてきました。
では、そのような傾向が家族の中にあった場合、どのようなことが起こるのでしょうか。
司法書士として相続のご相談を受けていると、「法律の問題」というより、「人間関係の問題」が相続を難しくしているケースを数多く目にします。
実際には、遺産の金額が大きいから揉めるのではありません。
長年積み重ねてきた感情や不満、家族関係のゆがみが、相続という出来事をきっかけに表面化することが多いのです。
今回は、「人間関係の健全化」という視点から、相続や介護、生前対策について考えてみたいと思います。
目次
- 相続は家族関係を映す鏡
- 自己愛的な傾向がある家族との相続で起こりやすいこと
- 介護や財産管理でも起こる問題
- 生前対策が家族を守る
- 相続対策の本当の目的とは
1.相続は家族関係を映す鏡

「相続で兄弟が仲違いした。」
このような話を耳にすることがあります。
しかし、多くの場合、相続そのものが原因ではありません。
もともと存在していた家族間のわだかまりや不公平感が、相続という出来事をきっかけに表面化した結果なのです。
例えば、
「昔から兄ばかり優遇されていた。」
「親は妹の意見しか聞かなかった。」
「介護は自分だけが負担した。」
こうした長年の感情は、財産を分ける場面で一気に噴き出すことがあります。
つまり、相続は「財産の問題」であると同時に、「人間関係の問題」でもあるのです。
2.自己愛的な傾向がある家族との相続で起こりやすいこと

家族に自己愛的な傾向が強い人がいる場合、相続では次のような状況が見られることがあります。
- 自分だけが多く受け取るのが当然だと考える
- 他の相続人の意見を聞こうとしない
- 自分に都合の良い情報だけを伝える
- 話し合いを支配しようとする
- 自分が被害者であると主張する
もちろん、すべての人がそうとは限りません。
しかし、「自分が正しい」「自分が優先されるべきだ」という考え方が強い場合、冷静な話し合いが難しくなることがあります。
その結果、兄弟姉妹の関係がさらに悪化し、家族全体の信頼関係まで損なわれてしまうこともあります。
3.介護や財産管理でも起こる問題

このような問題は、相続が始まってからではなく、親が元気なうちから始まっていることもあります。
例えば、
「親のお金は自分が管理する。」
「介護の方針は自分が決める。」
「兄弟には知らせなくていい。」
こうした状況では、本人に悪意がなくても、他の家族には不信感が生まれやすくなります。
また、介護を一人だけが担う状況では、「これだけ苦労したのだから、自分が多く相続して当然だ」という感情が生まれることもあります。
介護の負担や財産管理は、本来であれば家族全体で情報を共有し、できるだけ透明性を保つことが望ましいでしょう。
それが、後の相続トラブルを防ぐことにもつながります。
4.生前対策が家族を守る

私は、相続対策とは「財産を守ること」だけではないと考えています。
本当に守りたいのは、家族の関係ではないでしょうか。
そのためには、
- 遺言書を作成する
- 財産の内容を整理する
- 家族で情報を共有する
- 介護や財産管理について話し合う
- 専門家を交えて客観的に整理する
こうした生前対策が重要になります。
これらは、「誰かを信用していないから行う」のではありません。
むしろ、お互いを信頼しているからこそ、誤解が生まれないよう準備をしておくのです。
相続の準備とは、「争いを想定すること」ではなく、「安心を準備すること」なのです。
5.相続対策の本当の目的とは
「相続対策」と聞くと、多くの方は節税や財産分けを思い浮かべます。
もちろん、それらも大切です。
しかし、それ以上に大切なのは、家族がこれからも良い関係でいられる環境を整えることではないでしょうか。
相続は、一度きりです。
しかし、家族の関係は、その後も続いていきます。
だからこそ、法律だけではなく、人間関係にも目を向ける必要があります。
自己愛性パーソナリティというテーマを通してお伝えしたかったのは、「相手を悪者にすること」ではありません。
家族には、それぞれ異なる価値観があります。
だからこそ、お互いを尊重し、必要な境界線を持ち、安心して話し合える環境を整えることが大切です。
それこそが、「人間関係の健全化」であり、生前対策や相続対策の本当の目的なのではないでしょうか。
次回はいよいよシリーズ最終回です。
自己愛性パーソナリティというテーマを振り返りながら、「人間関係の健全化とは何か」、そして「自分らしい人生を守るために大切なこと」をまとめていきます。
まとめ
相続で本当に大切なのは、「財産をどう分けるか」だけではありません。
家族がお互いを理解し、安心して未来を迎えられるよう準備することも、大切な生前対策です。
アイリス国際司法書士・行政書士事務所では、遺言書や相続登記などの手続きだけでなく、ご家族が円満に話し合える環境づくりも大切にしながらサポートしています。
「家族関係に不安がある」「将来の相続で子どもたちが困らないように準備したい」とお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
今日の準備が、明日の家族の安心につながります。

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