相続の相談でいちばん多い失敗は、
「税理士に行ったら登記の話ができず、司法書士に行ったら税金が分からない」ことです。
親のお金を知らない子どもたち|「知らなかった」が家族を困らせる~相続前に確認したい財産管理のポイント~

「親のお金のことを聞いたことがありますか?」
そう聞かれると、「聞きたいけれど聞きづらい」「まだ元気だから大丈夫」と答える方が少なくありません。しかし、司法書士として相続相談を受けていると、ご家族から最も多く聞く言葉があります。それは、「何も分からないんです。」という一言です。
どこの銀行に預金があるのか、年金はどれくらい受け取っているのか、生命保険に加入しているのか、借入金はあるのか――。こうした情報が分からないまま相続が始まるケースは決して珍しくありません。
今回は、「親のお金を知ること」が、家族の安心につながる未来設計の第一歩である理由についてお話しします。
目次
- 「何も分からない」が相続で最も困ること
- 親は「迷惑を掛けたくない」と思っている
- 子どもは「聞きにくい」と感じている
- 最低限共有しておきたい5つの情報
- 財産目録を作るという選択肢
- 未来設計は家族の対話から始まる
- まとめ
1.「何も分からない」が相続で最も困ること

相続が始まると、ご家族から最初によくいただく相談があります。
「父はどこの銀行を使っていたのでしょうか。」
「保険に入っていたはずですが、書類が見当たりません。」
「株を持っていると聞いたことがありますが、証券会社が分かりません。」
実は、このような相談は決して珍しいものではありません。
親御さんがしっかりしていたからこそ、「自分で管理できるから大丈夫」と考え、ご家族へ詳しく伝えていなかったケースが多いのです。
しかし、いざ相続が始まると、銀行や証券会社を調べるだけでも多くの時間と労力が必要になります。場合によっては、存在を知らなかった財産が後から見つかり、相続手続きをやり直すこともあります。
「知らなかった」という一言が、家族に大きな負担を与えてしまうことがあるのです。
2.親は「迷惑を掛けたくない」と思っている

親御さんに理由を聞くと、多くの方がこうおっしゃいます。
「まだ元気だから。」
「子どもに心配を掛けたくない。」
「財産の話をすると、気を遣わせてしまう。」
つまり、家族を思う気持ちから話していないのです。
一方で、お子さん側も「お金の話をすると財産目当てと思われそう」「まだ早いと言われるかもしれない」と遠慮してしまいます。
こうして、お互いを思いやる気持ちがあるにもかかわらず、誰も話題にしないまま時間だけが過ぎてしまいます。
そして、突然の入院や認知症、相続がきっかけとなり、「もっと早く話しておけばよかった」と後悔されるご家族を、私はこれまで数多く見てきました。
3.子どもは「聞きにくい」と感じている

親子だからこそ、お金の話は難しいものです。
しかし、「いくら持っているの?」と聞く必要はありません。
大切なのは、「もしもの時に困らないように、必要な情報だけ教えてほしい」という視点です。
相続対策は財産の額を知ることではありません。
家族が安心して手続きを進められるよう、必要な情報を共有することが目的です。
この考え方を家族で共有できるだけでも、将来の不安は大きく減らすことができます。
4.最低限共有しておきたい5つの情報

すべての財産を細かく把握する必要はありません。
まずは次の5つだけでも確認しておくことをおすすめします。
- どこの銀行を利用しているか
- 年金の受給状況
- 借入金やローンの有無
- 証券口座や株式・投資信託の有無
- ネット銀行やネット証券を利用しているか
最近では、インターネットだけで管理している金融資産も増えています。
ご家族がその存在を知らなければ、大切な財産がそのまま残ってしまう可能性もあります。
また、生命保険や個人年金、クレジットカード、サブスクリプション契約なども、一覧にしておくと安心です。
5.財産目録を作るという選択肢

私がおすすめしているのが、「財産目録」を作ることです。
財産目録とは、自分が持っている財産や負債を一覧にまとめたものです。
金額まで細かく書かなくても構いません。
「○○銀行に口座がある」「○○証券に口座がある」といった情報だけでも、ご家族にとっては大きな助けになります。
財産目録は相続対策だけではありません。
認知症への備えや、ご自身の資産管理にも役立つ、大切な未来設計の一つです。
6.未来設計は家族の対話から始まる

相続という言葉を聞くと、「亡くなった後の手続き」を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、本当に大切なのは、元気なうちに家族で話し合うことです。
親のお金を知ることは、財産を調べることではありません。
「もしもの時も家族が困らないように。」
そんな親の想いを形にすることが、本当の生前対策であり、未来設計です。
家族で一度話し合う時間を持つことが、将来の安心につながる第一歩になるでしょう。
7.まとめ

相続の現場では、「何も分からない」という状況から始まるケースが少なくありません。
だからこそ、親が元気な今だからこそできる準備があります。
銀行や年金、保険などの情報を少しずつ共有するだけでも、将来の家族の負担は大きく変わります。
相続は亡くなった後の手続きではなく、家族が安心して未来を迎えるための準備です。
まずは、ご家族で「少し話してみようか」という一言から始めてみてはいかがでしょうか。
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