不動産登記において新しく所有者となる方の国籍実態等を把握するための「検索用情報の申出制度」が開始されました。
これに伴い、すでに不動産をお持ちの方からの「単独申出」の手続き依頼を受ける機会が増えています。
しかし、新しい制度であるため「複数に分かれた持分がある場合はどう記載するのか」「本人がメールアドレスを持っていない場合はどう処理すべきか」など、実務上の細かい取扱いに悩む先生も多いのではないでしょうか。
今回は、当事務所で実際に手掛けた解決事案をもとに、検索用情報の単独申出における必要書類や委任状の記載例、さらには実務で気になる報酬相場や法務局への提出ルールまで、実務に直結するポイントを分かりやすく解説します。
初めての「不動産登記の検索用情報(国籍等情報)の申出」実務マニュアル!複数持分・メールアドレスなし・委任状の書き方を司法書士が解説

不動産登記において新しく所有者となる方の国籍実態等を把握するための「検索用情報の申出制度」が開始されました。
これに伴い、すでに不動産をお持ちの方からの「単独申出」の手続き依頼を受ける機会が増えています。
しかし、新しい制度であるため「複数に分かれた持分がある場合はどう記載するのか」「本人がメールアドレスを持っていない場合はどう処理すべきか」など、実務上の細かい取扱いに悩む先生も多いのではないでしょうか。
今回は、当事務所で実際に手掛けた解決事案をもとに、検索用情報の単独申出における必要書類や委任状の記載例、さらには実務で気になる報酬相場や法務局への提出ルールまで、実務に直結するポイントを分かりやすく解説します。
目次
- 不動産登記の検索用情報の申出制度とは
- 単独申出に必要な基本書類と司法書士への委任
- 複数順位で持分を取得している場合の不動産の表示
- 名義人がメールアドレスを使用しない・持っていない場合の書き方
- 検索用情報申出における司法書士の報酬相場
- まとめ:新制度へのスムーズな対応に向けて
1. 不動産登記の検索用情報の申出制度とは

不動産登記規則の改正により、登記名義人の国籍や地域、生年月日などの情報を「検索用情報」として法務局に申し出る制度が導入されました。
この制度の主な目的は、所有者不明土地の発生予防や、外資による土地取得の実態把握、そして将来的には住基ネット等と連携した「スマート変更登記(自動的な住所・氏名変更)」の基盤づくりにあります。
提供された国籍等の情報は法務局の内部システムで厳重に管理され、一般に公開される「登記事項証明書」には一切記載されません。
そのため、依頼者のプライバシーは完全に守られた状態で手続きが行われます。
この申出は、売買や相続による所有権移転登記と同時に行うケースと、すでに所有している不動産について後から任意で行う「単独申出」のケースに分かれます。
2. 単独申出に必要な基本書類と司法書士への委任
すでに登記されている不動産について、後追い単独申出を行う場合の基本書類は非常にシンプルです。
依頼者ご本人の身分証明書の写し(運転免許証やマイナンバーカード表面のコピーなど)が1点あれば、基本的には手続きを進めることができます。(※2026年10月5日以降は、国籍証明情報として、本籍地入りの住民票などが求められます。)
司法書士が代理人として申請を受託する場合、委任状の作成が必要になります。
一般的な登記委任状と異なり、委任事項には「不動産登記規則第158条の40第1項の規定による検索用情報の提供の申出に関する一切の件」と明記します。
なお、売買や相続の登記申請と同時にまとめて一括委任を受ける場合は、根拠条文が「第158条の39」へと変わるため注意が必要です。
条文間違いを防ぎたい場合は、シンプルに「検索用情報の申出に関する件」と記載しても法務局で問題なく受理されます。
※司法書士に依頼する場合、司法書士で適正な申出書と委任状の作成をしてもらえます。
3. 複数順位で持分を取得している場合の不動産の表示

実務で最も迷いやすいポイントの一つが、依頼者が同じ不動産の持分を複数の異なる順位番号(例えば、順位3番で3分の1、順位5番で3分の1など)で移転・取得しているケースです。
検索用情報の申出は「登記名義人ごと」かつ「順位番号ごと」に管理されるため、不動産の特定が必要になります。
単独申出(所有権移転登記と一緒でない申出)の場合、順位番号によってご自身の所有権(持分)が法務局側で完全に特定できるため、申出書や委任状にわざわざ「持分3分の2」といった合算や表記をする必要はありません。
不動産の表示欄には、不動産番号に続けて「(順位3番、順位5番)」と、該当するすべての順位番号を並べて書き添えるだけで足ります。
4. 名義人がメールアドレスを使用しない・持っていない場合の書き方

検索用情報の申出では、将来の住所変更時に法務局から本人確認を行うための連絡先として、原則「本人のメールアドレス」の登録が求められます。
このアドレス欄には、代理人である司法書士のメールアドレスを設定することは認められていません。
では、依頼者がメールアドレスを持っていない場合や、登録を希望しない場合はどうすればよいのでしょうか。
結論として、メールアドレスがなくても申出は完全に可能です。
紙の申出書で提出する場合は、メールアドレスの欄に「なし」と明記します。
士業ソフトなどのオンライン申請を利用する場合は、入力画面を空欄にするか「なし」とした上で、その他事項欄に「登記名義人につきメールアドレスなし」と入力して連動させます。
メールアドレスを「なし」として申し出た場合、将来の本人確認の通知は「郵送(書面)」で自宅に届くようになります。
郵送対応になっても、自動変更のメリットや税制上の優遇措置(登録免許税の免除など)は変わらず受けられるため、デメリットはありません。
5. 検索用情報申出における司法書士の報酬相場

本手続きを依頼される際、あるいは事務所として報酬を設定する際の目安となる相場は、申請のタイミングや調査の範囲によって主に以下の3つのパターンに分かれます。
- 所有権移転・保存登記と同時に依頼する場合
- 報酬:0円〜数千円(基本の登記報酬に含まれることが多い)
- 詳細:不動産の売買や相続登記など、通常の所有権登記の申請と同時に検索用情報を提出する場合は、手続きの一環として処理されるため、別途の追加報酬はかからないケースが一般的です。
- すでに所有している物件について、後日「単独」で申し出る場合(資料が揃っている)
- 報酬:5,000円〜15,000円程度(1件・1管轄あたり)
- 詳細:依頼者が自身の正確な現在住所・フリガナ・生年月日などの情報を明確に提供し、すでに最新の登記情報も確認できている場合の手数料です。
- 評価証明書や固定資産税通知書などから登記簿を調査し、所有するすべての物件の検索用情報を一括して申し出る場合
- 報酬:30,000円〜50,000円前後(物件数・管轄数による加算あり)
- 詳細:どの法務局にどんな物件をいくつ持っているか(名寄せや登記簿の調査)を司法書士が代行して調べ上げる作業が発生するため、調査費用(登記情報取得費実費:1筆あたり数百円など)に加えて、手間や管轄数に応じた専門的な調査・申請報酬が加算されます。
6. まとめ:新制度へのスムーズな対応に向けて
新しく始まった検索用情報の申出制度は、従来の不動産登記実務とは少し異なる独自のルールや運用が盛り込まれています。
しかし、複数持分の処理方法やメールアドレスがない場合の記載実務など、ポイントさえ押さえておけば決して難しい手続きではありません。
現在、多くの士業向けソフトでも最新のフォーマットが実装されており、自動生成機能を活用すれば、より確実かつスピーディに対応することができます。
法改正や新制度の導入直後は戸惑うことも多いですが、一つひとつの実務を正確に積み重ねることで、クライアントからの信頼をさらに高めることができます。
当事務所では、今後も法改正に伴う新しい手続きにいち早く対応し、皆様の円滑な不動産取引と権利の保護をサポートしてまいります。

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